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データ駆動型農業の地域実装に向けた協働プロジェクトの開始

2020.02.19

  • 東日本電信電話株式会社※1、株式会社NTTアグリテクノロジー※2、国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構※3は、農業の生産性向上や生産者の所得向上を目的に、データ駆動型農業の地域実装を協力して推進するため、本日連携協定を締結しました。
  • 3社は、農研機構が保有する農産物栽培マニュアルをデジタル化してクラウドに格納し、圃場にあるIoTセンシング機器で取得する環境データと自動的に連動する仕組みを日本で初めて実現します。
    これにより、農業生産者がIoT等の技術を手軽に活用し省力化や失敗のない栽培などにつなげることで、農業が地域産業として維持・成長することをめざします。
  • 2021年内の本格展開に向け、本年3月から4県の公設農業試験研究機関※4および地元生産者の協力を得てフィージビリティスタディを行います。

1.背景と目的

日本では少子高齢化により農業従事者が減少する中、担い手農家の負担増加や遊休農地拡大等の課題に対処すべく、省力化や生産性向上を実現するスマート農業への関心が高まっています。
また、政府は経済発展と社会的課題の解決を両立する「Society5.0」※5の実現に向け、AIやIoTを活用した「データ駆動型社会」を提唱しており、農業分野においても「2025年までに農家の担い手のほぼすべてがデータを活用した農業を実践」することを目標に掲げています※6

一方、「データを活用した農業の実践」に向けては、生産者や地域の利益につながる仕組みが求められます。
例えば、生産者からは「経験値に頼らず、高単価な農産物や競争力がある新たな品種を安定生産でき、所得向上につながる」仕組み、自治体からは「農産物の栽培技術の継承や、ブランド力向上を通じ、農業を持続可能な産業として維持・成長させる」仕組みに期待する声が寄せられています。

こうした期待に応えていくため、ICT※7を活用し地域の課題解決や成長をめざすNTT東日本、NTTグループ唯一の農業生産法人として農業現場でのICT活用を進めるNTTアグリテクノロジー、農業を強い産業にするための科学技術イノベーションの創出に取り組む農研機構は、3社の強みを融合し、データ駆動型農業の地域への実装を進めることで合意し、本日連携協定を締結することとなりました。

2.取り組み内容

農研機構および地域の公設農業試験研究機関が現在紙で保有している栽培マニュアルをデジタル化し、クラウド上に格納します。そして当該データと、圃場に設置したIoTセンシング機器が取得する環境データ(温度等)を、自動的に連動させる農業生産者向けの仕組みを実現します。

これにより、栽培経験が浅い生産者でも最適な圃場環境の管理ができる情報や栽培法を効果的に入手できます。例えば、農業に新規参入した生産者や、付加価値が高い品種の栽培に新たにチャレンジする生産者の安定生産を支援します。
さらに、地域や農産物の種類にあわせ、最適な圃場環境管理に必要な基準(温度等)が生産者の端末(タブレット等)に自動的に表示されるため、ICTの専門知識がなくても手軽に活用でき、地域におけるデータ駆動型農業を身近にします。

また、デジタル化された栽培マニュアルは技術の継承に活用でき、農業を持続可能な産業として維持・成長させることが期待されます。
さらに、圃場に設置するIoTセンシング機器にて蓄積された環境データを、デジタル化した栽培マニュアルに反映させブラッシュアップを図ることで、産地全体のブランドや付加価値の向上につなげます。

なお本取り組みは、農研機構が品種登録を行い、様々な自治体で栽培ニーズが高まっている「シャインマスカット」から開始し、各地域の公設農業試験研究機関、地元生産者の協力を得てフィージビリティスタディを行います。

3.各社の役割

4.今後の展開

  • 農研機構は「ふじ(りんご)」や「幸水(なし)」など約100種類におよぶ育種を行い、栽培ノウハウを保有していることから、生産者や地域の要望等を踏まえ、農産物の種類やエリアの拡大を検討します。
  • パブリックデータ(気象データ等)をデジタル化した栽培マニュアルに反映させブラッシュアップを図ります。
  • APIでの展開を検討し、様々な企業と協力してデータ駆動型農業の実装を推進します。
  • 収集したデータを、その他分野にも活用していきます(農産物の収量予測や病虫害診断等)。

3社は生産者や地域のニーズや要望を踏まえて、今後も取り組みの拡大を図ってまいります。

5.プロジェクトメンバーからのエンドースメント

岩手県農業研究センター様

本県では生食用ぶどうの大粒品種への転換が進められてきており、特に、消費者に人気の高い「シャインマスカット」は栽培面積が年々増加しております。
一方、近年は気候変動が大きい傾向にあり、年ごとの気温・降雨条件等に対応した栽培管理法を確立していくことが重要となってきています。
本プロジェクトの取り組みにより、IoTセンシングデータに基づいた栽培管理が生産者にとって身近なものとなり、高品質なぶどうの安定生産につながることを期待しています。

岩手県農業研究センター所長 小岩 一幸

群馬県農業技術センター様

当センターでは、スマート農業の実用化技術の開発に取り組んでいます。本プロジェクトの取り組みによって、ブドウの生育が順調に進んでいるかなど、数値で把握することができるようになります。生育状況について、数値での評価ができれば、生産工程で重要なPDCAサイクルを回すことができると思っています。
データ分析に基づく意思決定を行うことで、各作業のタイミングなど判断に迷うこともなく、天候不順の影響も受けず、安定して高品質な果実生産に寄与できると考えています。

群馬県農業技術センター 所長 田村 利行

長野県果樹試験場様

長野県でもぶどう「シャインマスカット」の生産拡大が進められ、販売期間の拡大や経営安定のため施設栽培の導入が進んでいます。施設栽培では、IoTを利用した総合的な制御で、より省力的に安定的な果実生産が可能と期待しております。
そこで、長野県では、本プロジェクトの取り組みに参画し県内3か所の加温ハウスを用いて、生育ステージごとの環境データをIoTとクラウドを利用して管理するとともに、栽培管理の電子マニュアルを作成します。また、マニュアル更新の迅速化を図るために生育と環境のデータ収集と蓄積を進めます。
これらにより、「シャインマスカット」の出荷期間が拡大し、生産の安定と拡大が図られ農家所得の向上が期待できます。また、気象変動下での生産安定にも利用できると考えています。

長野県果樹試験場長 小松 宏光

山梨県果樹試験場様

本県の農業は、生産量日本一を誇るぶどう、もも、すももなどの果樹を中心に、特色ある産地を形成し発展してきました。近年は、「シャインマスカット」の登場もあり、生産額は回復傾向、輸出額も増加しています。一方、農業従事者の減少や高齢化が進み、栽培面積は減少しています。こうした状況に対応するため、本年度「やまなし農業基本計画」を策定し、ビッグデータの蓄積やIoT等を活用した先進技術導入により、農業生産の効率化、農産物の高品質化を図ることとしています。
今回のプロジェクトは、まさに施策に合致した内容となっており、山梨県果樹試験場としてもIoTを利用したスマート農業の実現に向け、しっかりと実証実験を行っていきます。

山梨県果樹試験場長 武井 和仁

本件に関する報道機関からの問合わせ先

株式会社NTTアグリテクノロジー

03-5359-4831 03-5359-4831

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